ミラージュ・プリンセス♡ 〜私が、王女さまって本当ですか?〜

 作戦会議が終わり、ライトとユーリウスが準備のために部屋を出て行った後。
 私は一人、ソファに座り込んで、スケジュールメモを見返していた。

 夜は晩餐会。これが一番大事! 絶対に終始ニコニコしててね。

 ロゼリアの殴り書きの下に、よくよくみると文字が消された跡がみえる。

 ダンスあり。まあ適当に踊っときゃいいわよ。

「……は?」

 思わず声が出た。

「だ、ダンス!?」

 聞いてない。
 そんなの、全然聞いてない!
 適当に踊るって、私、ダンスなんて踊ったことないんですけど!?

 学校のダンスの授業でさえ、人とペアを組むのが嫌で見学してたのに。
 あんな優雅でキラキラしたやつ、絶対無理!

「どうしよう……」

 パニックになりかけたとき、コンコン、とノックの音。

「ロゼリア様、失礼いたします」

 レオンハルトが入ってきた。
 彼は私の顔を見て、すぐに眉をひそめる。

「お顔の色が優れませんが……大丈夫ですか?」

「あ、えっと……」

 私は咄嗟に、足首のあたりを押さえた。

「じつは、さっき庭園から逃げるとき、ちょっと足を捻っちゃったみたいで……」

「なんと!?」

 レオンハルトが驚いて駆け寄ってくる。

「なぜ、すぐに言わなかったのですか! すぐに侍医を!」

「だ、大丈夫! ちょっと痛いだけだから!」

 慌てて手を振る。
 本当は全然痛くないんだけど。

「でも……その、今夜の晩餐会で、ダンスとかあるんだよね? それが踊れないかも……」

 私がおそるおそる言うと、レオンハルトは深刻な顔で頷いた。

「確かに、開宴後にダンスの時間がございます。ロゼリア様ほどの方がダンスを披露されないとなると、周囲に不審がられるでしょう」

「う……」

「それに、宰相も必ず見ています。『怪我をした』というのは、襲撃が成功したと思わせてしまう」

 レオンハルトが真剣な目で私を見つめた。

「……痛みは、どの程度ですか?」

「え、えっと……動かせないほどじゃないけど、優雅に踊れる自信は……」

「そうですか」

 レオンハルトは少し考え込むように腕を組んだ。
 そして、何かを決心したように顔を上げる。

「でしたら――私が、特訓いたします」

「え?」

「足に負担をかけない踊り方を、今からお教えします。本来のステップとは少し違いますが、見た目には優雅に見えるはずです」

 そう言って、レオンハルトはすっと手を差し出した。

「お手を、どうぞ」