ミラージュ・プリンセス♡ 〜私が、王女さまって本当ですか?〜

 ライトが元気よく立ち上がり、ホワイトボードみたいな黒板を持ってきた。

「敵が狙うとしたら、最初に行われる乾杯のグラスだな」

 ユーリウスがチョークで図を描く。

「給仕に扮した実行犯が、近づいてくる可能性が高い。私が会場全体の監視魔法を強化し、不審な魔力反応を探知する」

「んじゃ、僕は会場の扉に新作の『特殊粘着トラップ』を仕掛けておくよ! 逃げようとしてもベタベタで動けなくなるやつ!」

「レオンハルトは、私のすぐ側で待機。一番怪しい人が来たら、私が合図するから」

「合図?」

「うん。私が……そうだな、グラスをわざと落とす。それが突入の合図」

「わかりました。……しかしロゼリア様、なぜそこまで?」

 レオンハルトが、とても不思議そうに尋ねた。

「以前のあなたなら、間違いなく部屋に閉じこもって、我々に『犯人の首を持ってこい』と命令していたはずです」

「……そうだよね」

 私は窓の外の滲む空を見た。

「なんかね、わかったの。守られているだけじゃ、何も変わらないって」

 自分から考えて動かなきゃ、世界は変わらない。
 鏡の向こうから飛び出してきたロゼリアが教えてくれたこと。

「だから、私も戦う。みんなと一緒に。この状況を変えたいから」

 三人は、眩しいものを見るような目で私を見つめた。
 そして、同時に片膝をつき、胸に手を当てた。

「我らの剣と魔法と知恵を、王女殿下に」

 その光景は、どんな映画よりもかっこいい。
 私は顔が熱くなるのを抑えながら、力強く頷いた。

「さあ、反撃開始よ!」

 実はもう一つ。
 私には、みんなには内緒の切り札があった。

 ドレスの内ポケットの中、スリープモードになっている黒い板。
 つまりスマートフォン。

 科学の力のないこの世界で、スマートフォンの録音機能は最強の魔法にも匹敵するくらい強い証拠を記録できるはず。

 悪役の宰相さん。
 女子中学生のアイテム、舐めないでよね!