ミラージュ・プリンセス♡ 〜私が、王女さまって本当ですか?〜

「こっちです! このバラ迷路に入れば、矢の射線は通りません!」

 レオンハルトに手を引かれ、私は必死で走った。
 背丈よりも、はるかに高いバラの生垣が続く迷路エリア。
 ドレスの裾がトゲに引っかかるのも構わず、私たちは奥へ奥へと逃げ込んだ。

「はぁ、はぁ……っ!」

 迷路の中央付近にある、古い噴水の陰に滑り込む。
 もう、心臓が破裂しそう。
 遠くでユーリウスが放っている魔法が弾ける音や、ライトの「あっちだ! 逃がすな!」という叫び声が聞こえてくる。

「……もう、大丈夫です」

 レオンハルトが、剣を抜いたまま周囲を警戒する。
 私は完全に腰が抜けて、その場にへたり込んだ。
 ずるずると噴水の縁にもたれ掛かる。

「死ぬかと……思った……」

 私、ただの女子中学生だよ?
 矢で、狙われるとか、完全にファンタジー漫画の話じゃないの?
 自分でも気が付かないうちに、涙がじわりと滲んでくる。

 その時。
 カツン、と何かが石畳に落ちる音がした。