私はあえて大袈裟に頷いてみせた。
すると、ユーリウスの眉がピクリと動いた。
「……嘘ですね」
「えっ」
「この本は、今日届いたばかりの新刊です。先週、暖炉に入れられそうになったのは別の本です」
「あ……」
引っかかった。
カマをかけられたんだ。
私は顔面蒼白になった。
もう言い逃れできない。
ユーリウスがゆっくりと顔を近づけてくる。
整った顔立ちが目の前に迫り、綺麗な瞳が私を射抜く。
「あなたは、誰です? ロゼリア様の姿をして、何を企んでいる?」
地を這うような低い声。これは本気の声。
私が恐怖で身を縮こまらせた、その時だった。
「……まあ、今は問い詰めません。まだ」
不意に、ユーリウスが身を引いた。
「え?」
「あなたが何者であれ、今のところ王宮に害をなす様子はない。それに……ライトがあんなに懐いているのを引き剥がすのも、骨が折れますから」
彼は呆れたように肩をすくめた。
そして、私のドレスの裾に視線を落とした。
さっきライトの実験室で紅茶を浴びたシミが、茶色く残っている。
「それにしても……汚いですね」
「うっ……これは、その」
「王族がそのような薄汚れた姿で歩き回るなど、言語道断です。少しはじっとしていてください」
ユーリウスは短く詠唱すると、細い指先を私のドレスに向けた。
