「美亜、また部屋にこもってるの?」
階段の下から、お母さんのあきれたような声が聞こえてくる。
私――小鳥遊美亜(たかなしみあ)は、その声から逃げるように布団を頭までかぶった。
夕暮れの薄暗い部屋。
カーテンの隙間から差し込むオレンジ色の光が、机の上に置かれたままの教科書や文房具を照らしている。
「……べつに、いいじゃん」
誰に聞かせるわけでもなく、小さくつぶやく。
中学二年生の春。
新しい制服に袖を通したときは、あんなにドキドキしていたのに。
学年が一つ上がってから行われたクラス替えで、仲の良かった友達とは離れ離れ。
新しいクラスでは、なんとなくグループが出来上がっていて、私が入る隙間なんてどこにもなかった。
休み時間は図書室へ逃げ込み、放課後は誰とも目を合わせずにまっすぐ家に帰る毎日。
新学年がスタートしてから、一か月が過ぎようとしているのに。
ベッドにごろごろしながら、枕元で充電していたスマートフォンを手に取る。
指先でSNSのアイコンをタップすると、タイムラインには楽しそうな世界があふれていた。
『今日のヌン茶(アフタヌーンティー)、最高!』
『カラオケなう。C組メンツ楽しすぎw』
スタンプやフィルターで飾られ、アップされている写真には、キラキラした笑顔のクラスメイトたち。
その端っこにすら、私はいない。
胸の奥が、ぎゅっと締め付けられるみたいに苦しい。
私だけが、世界から取り残されている気がする。
いいな……みんな、楽しそう……。
自分に自信なんて、これっぽっちも持てない。
目立つ特技もないし、勉強も運動も平均値。
背だって低いし、顔だって地味でパッとしない。
物語の主人公になんてなれない、どこにでもいる、村人A。それが私だ。
「はぁ……」
重たいため息をついて、ベッドから起き上がる。
部屋の隅に置いてある、アンティーク調の姿見は、おばあちゃんが大事にしていたという古い鏡だ。
なんとなくその前に立って、自分の顔を映してみる。
寝癖のついた黒髪に、少し猫背の姿勢。冴えない色の部屋着。
鏡の中の私は、つまらなそうな顔でこちらを見返していた。
階段の下から、お母さんのあきれたような声が聞こえてくる。
私――小鳥遊美亜(たかなしみあ)は、その声から逃げるように布団を頭までかぶった。
夕暮れの薄暗い部屋。
カーテンの隙間から差し込むオレンジ色の光が、机の上に置かれたままの教科書や文房具を照らしている。
「……べつに、いいじゃん」
誰に聞かせるわけでもなく、小さくつぶやく。
中学二年生の春。
新しい制服に袖を通したときは、あんなにドキドキしていたのに。
学年が一つ上がってから行われたクラス替えで、仲の良かった友達とは離れ離れ。
新しいクラスでは、なんとなくグループが出来上がっていて、私が入る隙間なんてどこにもなかった。
休み時間は図書室へ逃げ込み、放課後は誰とも目を合わせずにまっすぐ家に帰る毎日。
新学年がスタートしてから、一か月が過ぎようとしているのに。
ベッドにごろごろしながら、枕元で充電していたスマートフォンを手に取る。
指先でSNSのアイコンをタップすると、タイムラインには楽しそうな世界があふれていた。
『今日のヌン茶(アフタヌーンティー)、最高!』
『カラオケなう。C組メンツ楽しすぎw』
スタンプやフィルターで飾られ、アップされている写真には、キラキラした笑顔のクラスメイトたち。
その端っこにすら、私はいない。
胸の奥が、ぎゅっと締め付けられるみたいに苦しい。
私だけが、世界から取り残されている気がする。
いいな……みんな、楽しそう……。
自分に自信なんて、これっぽっちも持てない。
目立つ特技もないし、勉強も運動も平均値。
背だって低いし、顔だって地味でパッとしない。
物語の主人公になんてなれない、どこにでもいる、村人A。それが私だ。
「はぁ……」
重たいため息をついて、ベッドから起き上がる。
部屋の隅に置いてある、アンティーク調の姿見は、おばあちゃんが大事にしていたという古い鏡だ。
なんとなくその前に立って、自分の顔を映してみる。
寝癖のついた黒髪に、少し猫背の姿勢。冴えない色の部屋着。
鏡の中の私は、つまらなそうな顔でこちらを見返していた。
