わがまま姫のりんごパイ

 ――つぎの日。 お城のお庭で、世界一大きなリンゴパイが焼き上がりました。

 甘くて香ばしい、とってもいい匂いに誘われて、村人たちが遠巻きに集まってきます。

 村人たちはみんな、お腹をすかせた様子で、お城の真ん中にある輝くようなリンゴパイをじーっと見つめていました。
 
 その光景を見たとき、お姫様の胸に、昨夜の自分の姿がハッとよみがえりました。

(お腹がすいて、食べたいのに、ひとり占めされて分けてもらえない……。あれは、あんなに悲しくて、寂しいことだったんだわ……!)
 
 その瞬間、わがまま姫の頭の中に、あの旅人の言葉が優しく響きました。

『それはね、ひとりでは決してつくれない、とっても大きなパイなのです』

(あぁ、そういうことだったのね……!)

 すべてを理解したお姫様は、にっこりと太陽のような笑顔を浮かべ、お庭に響き渡る大きな声で言いました。

「さあ、みんな! 好きなだけ、いっしょに食べましょう!」

 村人たちは思いもよらなかった言葉に、顔を見合わせます。

「わぁーー」子供たちや大人までも、喜びの声でりんごパイの周りに集まりました。

 みんなで分けたパイは、お日様みたいに温かくて、一人で食べるよりずっと、ずーっと甘く、今までで一番おいしい味がしました。

 その日から、お姫様はもう「わがまま」ではありません。

 おいしいものを見つけると、村のみんなを呼んで、楽しく分け合って食べるようになったのです。

 おしまい。