魔族の娘と盲目の王子

「なんて心地よい歌声だろう。ブラウン、一体どんなお嬢様が歌っているのか、私に教えておくれ」  

 騎士ブラウンは、鋼のような体で馬を止め、草陰からラビーネを覗き見ました。 ……そして、彼は息を呑みました。 青い肌、炎の髪、そして頭上の恐ろしい角。ブラウンは慌てて身構えました。

「王子様、どうかここでお待ちを」

 騎士の声には、死の匂いが混じっていました。彼は腰の剣を抜き放ち、忍び足でラビーネへと近づきます。動物たちは異変を感じて一斉に逃げ出しました。

 ラビーネが振り返ると、そこには抜かれた剣が、太陽の光を反射してぎらりと光っていました。
 彼女は、生まれて初めて「人間の刃」という恐怖に直面しました。

 震える指で、彼女は魔法の鏡を叩きました。

「ヘイ、鏡! どうすればいいの、教えて!」

 鏡の奥底で、何千もの知識が渦巻き、一つの答えを導き出しました。

「魔族には魔族の、おまじないがございます。手を差し出し。大きな声で」

 ラビーネは、大きく振りかぶられた剣を前に、震える声でその「呪文」を唱えました。

「トリック・オア・トリート……!」

 勇猛な騎士ブラウンは、まるで魔法にかけられた石像のように、ぴたりと動きを止めました。