魔族の娘と盲目の王子

 心からの初めての喜び。その調べは、森の精霊さえも足を止めるほど、清らかで切ないものでした。
 トゥルルールー……。魔法の鏡が、チェロの物悲しい調べを奏でます。

 ラビーネはくるくる回って飛び跳ね、歌でこの気持ちを表現しました。

「ああっ、なんて素敵なの。この空、この大地。私は今、自由の翼を手に入れたようよ――!」

 彼女の周りには、好奇心旺盛なウサギや、誇り高い鹿の親子が集まってきました。小鳥たちは、ルビーのようなさくらんぼを、その小さなくちばしで届けてくれます。

「ありがとう、可愛いお友達。まあ、これは高級なサトニシキね。高かったでしょ? 無理をさせたかしら……?」
 
 ラビーネが微笑むと、その美しさに、森の木々までもがうっとりと枝を揺らしました。
 けれど、その調べに引き寄せられたのは、動物たちだけではありませんでした。

 馬の蹄の音が、ゆっくりと近づいてきます。そこに現れたのは、この国のリノス王子でした。
 王子は、水面に浮かぶ白鳥のように、細く、儚い美しさを持っていました。

 その瞳は開かれていても、光を知ることはありません。けれど、彼の心は誰よりも敏感に「美しさ」を感じ取ることができたのです。