魔族の娘と盲目の王子

 その立ち振る舞いは、あたかも舞台上で悲劇を演じるハムレット役者のよう。

 もっとも、こうして時折「悲劇のヒロイン」になりきることは、彼女の中だけで密かなブームとなっていたのです。

「ああ、魔王様。私がこの地に幽閉されているのは、科せられた罰ゆえなのでしょうか?  私が菜食主義を貫き、信心深くあることが、お気に召さなかったと? ……それは、あまりにも残酷というものですわ」

 彼女はそのまま、力なく床に崩れ落ちると、指先で所在なげに「の」の字を書き始めました。

「魔王様……どうして、私をこれほどまで孤独になさるの。……ぐすん」

 ラビーネが嘆きに沈むやいなや、それまで桃色に輝いていた室内は、突如として不吉な暗黒に侵食され始めました。天井には亀裂が走り、氷柱のような鋭い岩肌が突き出します。

 その隙間からこぼれ落ちた一滴の雫が、闇の中で銀色の波紋となって静かに広がりました。

 ラビーネが真珠のようなその輝きに目を向けると、眩い光の中から巨大なホタテの貝が出現しました。
 貝がゆっくりとその口を開くと、溢れんばかりの光彩の中から、比類なき美しさを湛えた女神が姿を現します。