魔族の娘と盲目の王子

 沈黙の後、王子はゆっくりと視線を動かしました。
 そこには、残酷な朝日に照らされ、己の異形に震える一匹の獣がいました。

 王子は迷うことなく、その獣へと歩み寄ります。

「あっ……」

  王子は再び足元をよろめかせました。
 光を受けたのは一瞬だけで、無情にも暗闇の世界が再び王子を包み込んだのです。

 アフディーの魔法には、永遠に光を繋ぎ止めるほどの力はありませんでした。
 ラビーネは運命の残酷さに涙し、天を仰ぎました。

  命を削った願いは打ち砕かれ、その一瞬の光は、彼女が最も見られたくない姿を王子の瞳に焼き付けただけだったからです。
 けれど、王子は暗闇の中で迷うことなく手を伸ばし、ラビーネの異形の両手をしっかりと握りしめました。

 ラビーネは驚き、息を呑んで王子の表情を見つめました。

「君がラビーネだね。……やはり、そうだ」

 王子は優しく微笑みました。

「あの月のように美しい心を持った少女。この手の温もりを、僕は一瞬たりとも忘れてはいないよ。……本当に、ありがとう」

 ラビーネは打ちひしがれ、獣の顔から大粒の涙をこぼしながら、震える声で答えました。

「王子……覚えていて、くださったのですね。でも、もうお別れです。私は……故郷へ帰らなくてはなりません」

 ラビーネは泡になって消えゆく己の運命を隠し、最後の嘘をつきました。