魔族の娘と盲目の王子

 ラビーネの胸の中に、葛藤の嵐が吹き荒れます。
 懐にある鏡。そこに宿る、最後の一つの魔法の星。

(この魔法を使えば、私はもう帰れない。この人間界で、泡となり消えてしまう……。それに、もし魔法で王子の目が見えるようになったら……王子は、目の前に立つこの醜い私を見て、恐怖するかもしれない)

(それでも……)

 ラビーネは、地面に伏して自分を呼び続ける王子の姿を見つめました。
 自分に愛することを教えてくれた、白鳥のように清らかな心を持つ王子。

 彼に、この美しい世界の光を取り戻してほしい。たとえその光が、自分を拒絶するためのものだとしても。

「ヘイ、鏡。……私の、最後の願いを聞いて」

 ラビーネは鏡を高く掲げました。
 刹那、鏡から溢れ出した眩い光が王子の瞳を包み込みました。

 光を取り戻した王子の瞳には、世界があまりにも鮮やかに映りました。

 「ああ……ブラウン。君は、そんなにも逞しく、頼もしい騎士になっていたのだね」

 王子は懐かしい友と再会したかのように、ブラウンの手を握りしめ、喜びを分かち合いました。

 「ラビーネは……」

 王子の問いに、ブラウンは言葉を失い、そっと顔を伏せました。