魔族の娘と盲目の王子

 その言葉は、ラビーネの胸を鋭い棘(とげ)で刺しました。彼女は耐えきれず、そっと顔を背けます。

(いいえ、王子様。私は、あなたが思い描くような美しい娘ではありません。私は暗闇に住む者。もしあなたの瞳に光が戻ったなら、私のこの蒼い肌と角を見て、きっと恐れおののくでしょう……)

 そんなラビーネの心の震えが伝わったのでしょうか。リノス王子は、迷いのない穏やかな声で語りかけました。

「何故でしょうか。あなたの心が泣いているような気がして、放っておけないのです」

 王子は驚くラビーネの手をそっと取ると、その温もりを確かめるように続けました。

「私には、あなたの姿を外見で判断することはできません。けれど、この手の温もりから、あなたがどんなに優しい方なのかは分かります。あなたの心は、私が幼い頃に目にした、あの月のように清らかに輝いている……私にはそう確信できるのです」
 
 王子は優しく微笑み、空いている方の手で、自分の胸をそっと押さえました。

「人は鏡だと、昔からよく言われます。僕の心に映るあなたがこれほどまでに美しいのは、あなた自身が愛に満ちているから。……では、あなたという鏡に映る僕は、今、どのように見えているのでしょうか?」