魔族の娘と盲目の王子

 月は祝福するように、手で触れられそうなほど近くに寄り、草原を一面の銀色に輝かせました。
 眠っていたウサギや鹿たちが、まるで魔法の糸に引かれるように、一匹、また一匹と集まってきます。

 歌声が熱を帯びるにつれ、信じられない光景が広がりました。
 まるで重力に逆らうかのように、草花の露がふわりと宙に浮かび上がったのです。

 無数の水の粒は月明かりを透かし、ラビーネを包み込む「地上の星」となって輝き始めました。
  木々さえも葉を鳴らして伴奏を奏でるその調べは、この世のものとは思えないほど美しく、胸を締め付けるほどに切ない旋律(せんりつ)でした。

 その歌声に導かれ、リノス王子が覚束ない足取りで歩み寄ってきました。

 ラビーネはそっと歌をやめ、見つめると、王子は水色のような純粋な笑顔で話しかけます。

「なんて……なんて優しい歌声なんだ。まるでお月様が地上に降りて、愛を歌っているかのようだ」

  王子は、光を知らぬ瞳をラビーネの方へ向け、心の絵筆で彼女の姿を描き出そうとしました。

「姿は見えずとも分かります。きっとあなたは、春の夜明けのように気高く、光に満ちた姿をしているのでしょうね」