魔族の娘と盲目の王子

 その頃、深い森の反対側では、今回の騒動の主犯格である叔父のバルトロメウスと、その息子カスパールが焚き火を囲んでいました。

「父上ぇ。もう良いではございますかぁ。森の中はジメジメするし、お腹もお空きもうしました」

 そう言って、頬を膨らませて大きなぺろぺろキャンディーを舐めているのがカスパールです。
 彼は豪華な絹の服を泥で汚しながら、不満げに焚き火を眺めていました。

「黙れ、カスパール!  あの『弱き白鳥』が生きている限り、私に玉座は巡ってこないのだ。貴様も王太子になりたいだろう?」  

 バルトロメウスは、帽子についた大きな羽飾りを苛立たしげに揺らしながら、暗い森の奥を睨みつけました。

「王太子になんてならなくても、よいのです、僕は温かいお風呂に入ってキャンディーを食べていたいですぅ。……ああ、父上!。ごらんください。あの大樹のところに大きな蜂の巣が。 きっと美味しい蜂蜜が詰まっていることでしょうねー」

 呑気に指をさす息子を、バルトロメウスは一喝します。

「蜂の巣などどうでもいい! 弓兵ども、準備はいいか。あの忌々しい白鳥ごと、この森を火の海にしてくれるわ!」