魔族の娘と盲目の王子

 ブラウンの声は、過去の記憶を慈しむように震えていました。

「幼き王子は、父なる王にこう説いたのです。 『この男の瞳に宿る火は、悪意ではありません。それは、生きたいと願う切実な祈りなのです。どうか、彼に新しい命を』……。 王子は何日も、何夜も、冷たい石畳の上に跪き続けました。食事も摂らず、ただひたすらに、王の心を動かそうとされたのです」

 その無垢な慈悲が、ついに氷のような王の心を溶かしました。 一人の罪人は、その日から王子の最も忠実な「盾」となり、信頼という名の鋼を纏う守護騎士となりました。

「……王子の瞳から光が奪われたのは、それからしばらくしてのことでした。私はあの夜、月に向かって誓ったのです。王子の瞳の代わりとなり、この命が尽きるまで、あの方が歩む道を照らし続ける」

 話を聞き終えたラビーネの青い頬を、大粒の涙がさくらんぼのようにこぼれ落ち、草の葉を濡らしました。
 ブラウンは涙を流す魔族の娘を、射抜くような眼差しで見つめます。

 ふと、彼が少し体を動かした拍子に、鋭い痛みが苦痛に顔を歪めます。
 ラビーネは慌てて、その透き通るような青い手を差し出しました。