「俺、ちゃんと閉めろって言ったよな!」
かつて俺がこんなに声を荒げていたところを目撃したことがある人はいるのだろうか。
多分、いないな。なぜなら俺は基本的には穏やかな人間で、なにがあってもケンカには持ち込まないからだ。
というか、中学に入ってから今まで一度もケンカをしていない。
だとしたらこれはなんなのか。ケンカだ。
ここは風紀委員室の中、机を挟んで俺の向かいに立っているのは水瀬、周りはいつもどおり作業中。そんな中でのケンカである。
「悠、何回も言うけどそんなこと言われてないから!」
「嘘つけ。ことあるごとに毎回言ってるぞ。『ちゃんと閉めろ』って」
「いや、絶対言われてない! 細かいこと言われたら覚えてるはずだし!」
昨日の昼休み、俺たちは見回りの記録を書いていたのだが、昨日は起こったことが多すぎて書き終わらず、ほかの委員は教室に戻っていき残ったのは俺たちだけ。



