君となら地獄を見たい


18時になると定時を迎え、社員たちが次々と帰宅して行く。
基本残業がなく、土日祝日は休み、待遇も良いホワイト企業である"BLISTER"は日本で『就職したい企業トップ3』に毎年ランクインする程、人気の高い企業だ。

わたしは社員たちが帰宅して行くのを確認してから、三浪社長と共に社長室の隠し扉からエレベーターに乗り、B10まで下りて行く。

そこは"ロスト·ダガー"のメンバーたちが集うリビング的な空間となっており、大き過ぎるL字型のソファーに何型か分からない程の巨大なテレビ、立派なキッチンも完備されていた。

「はぁ〜!腹減ったぁ〜!」

そう言いながらエレベーターから降りた三浪社長、いや、ボスは真っ直ぐキッチンへと向かって行く。

キッチンに立ち、手際良く料理を作っていたのは、スナイパーを得意とするコードネーム"当雷一閃(あらい いっせん)"だ。
一閃くんは男性にしては小柄な体形だが、撃てば百発百中と言われている程のスナイパーの腕を持ち、明るく料理上手な一面にはかなりギャップがあった。

「一閃、今日の飯は〜?」

そう言って、料理をする一閃くんの肩に腕を回すボス。

「今日はビーフシチューにしてみました!」
「うお〜!美味そ〜!」
「あとポテトサラダもありますし、ガーリックトーストも焼きますよ!」

暗殺を仕事とする裏組織とは思えない程の穏やかな光景に、わたしはたまに錯覚してしまう。

わたしは、ただ普通に、一般人として生きているのではないか、と···―――

「わたし、お皿用意しますね。」

そう言って食器棚を開けると、「あ!射生さん!ありがとうございます!」と言い、笑顔を見せてくれる一閃くん。

するとボスは「あ、なっちゃん!俺、小さい皿じゃ足りないから、デカいのにして!」と言った。

「ボスって、何で射生さんだけ"なっちゃん"呼びなんすか?」

ビーフシチューを混ぜながら一閃くんがそう訊くと、ボスは「んー······」と考え込み、それから「一緒に居る時間が一番長いからかなぁ?」と言った。

「まぁ、確かに射生さんは第一秘書だから、ボスと過ごす時間一番長いですもんね。」

一閃くんはそう言って納得すると、「さぁ!ビーフシチュー出来ましたよぉ〜!」と言った。