君となら地獄を見たい


「もうそろそろお見えになると思いますよ。」

わたしがそう言った瞬間、社長室の扉をノックする音が響いた。

わたしはデスクから立ち上がると、社長室の扉に近付き、「はい。」と返事をする。

すると扉の外側からは、「秘書課の谷垣(たにがき)です。赤坂(あかさか)大臣がお見えになっております。」と言う、秘書課の女性の声が聞こえた。

わたしは三浪社長に目配せをすると、三浪社長が頷いたのを確認してから、社長室の扉を開けた。

「どうぞ。」

そう言い招き入れたのは、だらし無い体付きにスーツもまともに着こなせないような法務大臣の赤坂大臣だ。

赤坂大臣は「いやぁ、失礼するよ。」と言いながら、ニヤニヤした顔付きで社長室に入って来た。

「いらっしゃいませ。赤坂大臣、ご無沙汰しております。」

そう言って爽やかな笑顔で出迎えた三浪社長は、社長のデスクから接待用のソファーへと移動して来る。

赤坂大臣はドスンと大きな音を立てて、偉そうにソファーに腰を落とすと「いやいやぁ、立派な社長室ですなぁ!」と社長室を見回した。

「それは恐れ入ります。」

わたしは社長室の扉を閉めると、丁寧に客人を応対する三浪社長のすぐ傍に立ち、付き添った。

すると赤坂大臣は、三浪社長の傍に立つわたしを見上げ、「そちらのお嬢さんは?」と訊いた。

「うちの第一秘書です。」
「ほう、随分べっぴんさんな秘書をつけてるんですなぁ!さすが世界の"BLISTER"の社長さんだ!」

そう言い、社交辞令で笑い合う三浪社長と赤坂大臣。

そこで三浪社長は早速、赤坂大臣に「それで、赤坂大臣のような御方がわざわざ我が社に出向いて来られるとは···、どのような御要件ですか?」と問う。

赤坂大臣は「早速、本題に入りますか?」と言うと、先程のだらし無く下がる目尻から鋭い目付きに変わり、何かを企んでいるような表情を浮かべた。

「実は、三浪社長にお願いがありましてね。」
「わたしにお願い?何でしょうか?」

キョトンとする三浪社長の問いに赤坂大臣は前のめりになると、ニヤッと不敵な笑みを浮かべ、こう言った。

「山野首相の暗殺をお願い出来ますかな?」