君となら地獄を見たい


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あれから7年。わたしは、28歳になった。

あの日、自分の首を切ろうとしていたわたしを拾ってくれたのは、世界的にも有名な電機メーカー"BLISTER(ブリスター)"の代表取締役社長の三浪(みなみ)社長だった。

しかし、ユーモアがあり優しい笑顔の三浪社長には、裏の顔があった。
"BLISTER"の代表取締役社長というのは表向きの顔。
三浪社長の本来の姿は、裏組織"ロスト·ダガー"のボス、コードネーム"死浪烙成(しなみ らぐな)だ。

とは言っても、裏組織だからといって誰彼構わず暗殺するわけではない。

一見、他の国と比べれば戦争もなく平和に見える日本だが、裏社会にはたくさんのスパイが潜んでいる。
そのスパイたちから日本を守る為に活動をしているのが、"ロスト·ダガー"なのだ。

そしてあの日、そんな三浪社長こと、ボスに拾われたわたしは、"BLISTER"の三浪社長の第一秘書として雇われながら、密かに"ロスト·ダガー"に加入し、コードネーム"宝珠射生(ほうじゅ いるは)"という名をもらい、睡眠薬や毒薬などを用意する調合師として活動している。

「なっちゃーん、今日のお客は?」

社長室の社長椅子に座り、暇そうにクルクル回りながら三浪社長が言う。

わたしは社長室の秘書専用デスクでパソコンを操作しながら、「三浪社長、仕事中にその呼び方はやめてください。」と言った。

わたしは"BLISTER"での業務上は、社長第一秘書で本名の大葉夏菜(おおば なつな)を名乗っており、そんなわたしを三浪社長は"なっちゃん"と呼ぶのだ。

「いいじゃーん、俺となっちゃんしか居ないんだし。」

三浪社長は実際のところ年齢不詳だが、表向きは45歳という事になっており、社内では"イケメン社長"と呼ばれ、社長夫人の座を狙う女性社員は多い。

肩まである長さのサラサラのロングヘアに整った美形な顔立ち、身長180センチにスタイルも良く、45歳には見えない若々しい姿の三浪社長は、裏社会でも言い寄って来る女性は少なくなかった。