君となら地獄を見たい


次の日の社内は、朝から『赤坂大臣の事故死』の話で持ちきりだった。

それもそのはず。
昨日、我が社に赤坂大臣が訪問する姿を見た社員が複数人いたからだ。

赤坂大臣の事故死についてのニュースでは、赤坂大臣が乗る公用車が停止中の大型トレーラーに激突し、公用車は元の形が分からない程に潰れていたと報道されていた。

その公用車に乗っていたのは三名。
恐らく、赤坂大臣と秘書、運転手の三人であろうとの事だった。
遺体の破損は激しく、特定には時間がかかるとの事だが、亡くなったのは、赤坂大臣を含めたその三名で間違いないだろう。

「赤坂大臣、誰かに殺されたんじゃない?」
「あの大臣なら、色んな人に恨みかってそうだもんねぇ。」

そんな会話をする社員たちの横を通り過ぎ、総務課がある5階フロアの廊下を歩いていると、久しぶりに見掛ける妖艶なオーラを纏う女性社員に鉢合わせた。

「あら、大葉ちゃんじゃない!」
「あ、風上(かざかみ)部長。帰国されてたんですね。」

そこで会ったのは、茶色い縦ロールが入った髪の毛にグラマーな体型で男性社員たちを魅了する総務課の風上部長···――――
というのは表向きの顔で、本来の姿は"ロスト·ダガー"のメンバーである、コードネーム"風陣堕璃(ふうじん だり)"だ。

風上部長はその美貌からハニートラップを得意としているが、それだけではなく5ヶ国語を話せる帰国子女でもあり、ガンナーとしての腕もかなりのものだった。

「長期出張、お疲れ様です。」
「本当疲れたわよぉ〜。身体がバキバキ。」
「今回の任務は、なかなかハードでしたからね。」

わたしがそう言い苦笑いを浮かべると、風上部長は「一人でも良い男が居れば違ったのにね〜。おっさんばっかりよ、おっさん!」と"おっさん"を強調して言った。

「まぁ、とりあえず片付いて良かったわ。わたしの中での最高記録も出たし。」
「最高記録ですか?」

わたしがそう訊くと、風上部長は「12本も"花"摘んじゃった!」とピースをしながら綺麗なウインクをした。

風上部長の言う『12本の花を摘む』とは、『12人の男を殺した』という意味である。

「さすがですね···」
「まぁね〜。さぁーて!わたし今日は一日お休み貰うわ。帰って寝ようかなぁ。エステもいいわねぇ〜。」
「三浪社長には、伝えておきますね。」

わたしがそう言うと、風上部長は「じゃあ、よろしくねん!」と言い、長い髪の毛を揺らし、ヒールをコツコツと鳴らせながら帰って行った。