君となら地獄を見たい


「顔に傷ついてるじゃない。」

わたしは火鷹に駆け寄りそう言った。
しかし、火鷹は全く気にする様子もなく「こんなの傷の内に入らねーよ。」と言うと、「俺も腹減った。」とキッチンを覗きに来た。

「そんな傷でも馬鹿に出来ないのよ?毒でもついてたら、どうするの?ご飯の前に、先に傷を洗って来て。」
「んなの、あとでいいだろ。」
「ダメ。傷の手当てが先。」

強い口調でわたしがそう言うと、火鷹は面倒くさそうに「へいへい。」と言いながら、シャワールームの方へ歩いて行った。

「顔に傷とは、情けねーなぁ。」

呆れたような口調でそう言うボスに「うるせぇ。」と言い返す火鷹は、ズボンのポケットに手を突っ込みながら、シャワールームがある方の廊下へ消えて行った。

「なっちゃんの言う事はよく聞くよなぁ。」

怠そうに歩いて行った火鷹の背中を見てボスが言う。

「そうですか?」
「あいつは今まであんなに素直じゃなかったからな。」
「あれで素直なんですか?」
「よく喋るようになったし、なっちゃんの存在は偉大だね。」
「わたしは何もしてませんけど。」

わたしがそう言うと、ボスは「いいや。」とわたしの言葉を否定したあと、「なっちゃん、火鷹をよろしくね。」と言い、ニコリと笑った。

「さて、飯だ飯だぁ!」

そう言って、一閃くんが作ってくれたビーフシチューとガーリックトーストをテーブルへと運んで行くボス。

ボスは隠しているつもりだろうが、ボスは本当に火鷹を大切に想っている。
重大な任務のほとんどは火鷹に任せ、かなりの信頼もおいている。

これが"親子愛"というやつなのだろうか。

親の顔も知らなければ、親子愛なんてものに無縁に育ってきたわたしには、あまりにも羨ましい関係だが、わたしはボスがわたしを"本当の娘"のように想ってくれている事も感じ取っていた。