「いっててて…」
首の激痛で目が覚めて、我に返る。
あろうことか、俺はこの大事な日に、ソファで寝落ちしてしまった。
手探りでスマホをつかみ、時間を確認する。
スマホの画面には、5:30の時刻表示。こんなに早く起きたのは、俺の人生で前にも後にもないだろう。
俺は眠い目をこすってソファから離れ、なぜか玄関に放置されていた白いレジ袋をつかむ。
中には、化粧水、リップクリーム、ワックス。
レジ袋片手に洗面台に向かい、あの女性店員に教えてもらった戦利品たちを並べてみる。
とりあえず化粧水のボトルをつかみ、ボトルの裏側に書いてある使い方を確認する。
『適量を手のひらに出し、顔になじませてください』
――適量ってどれくらいなんだよ。マスカット一粒大とか、例を示せよ。
どれだけ考えても俺には化粧水の適量はわからないので、とりあえずボトルのふたを開けて化粧水を手のひらに出した。
ただの水のような感覚で心許ないが、これを顔になじませればいいらしい。
頬に化粧水を乗せると、冷たい感覚に思わず肩が跳ねた。
余った化粧水をなんとなく足に塗り、鏡に映る自分の顔を確認する。
ぼさぼさの髪や顔立ちは変わっていないが、肌つやがいいだけで印象が大きく変わっているように感じた。
リップに手を伸ばすと、リビングに置いていたスマホの着信音がほのかに聞こえてきた。
リップを持ったままリビングに向かい、特に考えずに応答ボタンを押す。



