【短編】中学時代好きだったあの子から、5年越しにLINEが来た


ほんのり湿った芝生を踏みしめながら、GoogleMap片手にさざ波珈琲店に向かう。

男一人では絶対に入らないであろう、水色の壁が印象的な北欧風のカフェに足を踏み入れる。

「大澤くん!」

店員が声をかけてくるより早く、静かな店内に深見菜音の声が響いた。

「…あちらの席に、どうぞ」

茶色いカフェエプロンをつけた女性店員が控えめに誘導してくれた席に座ると、「久しぶり」と向かいに座る深見菜音が笑った。

中学時代よりも伸びた髪は、肩よりやや下ですっぱりと切りそろえられている。

小さな角襟が付いた白いブラウスに、ピスタチオグリーンのショート丈のカーディガンを合わせた格好の彼女は、記憶の中の彼女よりずっと垢抜けて、大人びて見えた。

「そ、そういえば、渡したいものがあるって言ってたよね。なんだったの?」

勢いに任せてそう言い放った直後、猛烈に恥ずかしくなって(うつむ)いてしまう。

「そうだったね。…これ」

おそらく膝に置いていたであろう白い紙袋を差し出し、深見菜音が愛らしい笑みを浮かべる。

「お、ありがとう。」

「作りすぎちゃって、自分じゃ消化できなくて…あげるね」

深見菜音の言葉に、俺は吉本新喜劇ばりに椅子から転げ落ちそうになってしまった。

「じゃあ私はこれで…!」

珈琲(コーヒー)豆があしらわれた白いマグカップをあおった深見菜音が、そそくさとその場から退散する。

取り残された俺は、深見菜音からもらった白い紙袋の中身を取り出した。

現れたのは、口が赤いリボンで縛られた、透明な袋。袋の中には、一口サイズのチョコクッキーが5個並んでいた。



【Choco Cookie】 チョコ・クッキー
チョコレートを練り込んだ焼き菓子。
甘さとほろ苦さが混ざり合い、
手作りされることも多い、贈り物の定番。