中学時代好きだったあの子から、5年越しにLINEが来た


「わかんねー…」

バレンタインイブの2月13日、21時32分。

俺――大澤悠斗(おおさわゆうと)は今、一人暮らしのアパートで、ローテーブルに広げたノートパソコンとにらめっこしている。

ノートパソコンの画面には明日提出のレポート、『バレンタインのルーツ』。

――非リア男子大生をいじめて楽しいかよ。

クソみたいな課題を出した教授に心の中で毒を吐いていると、充電スタンドに立てていた俺のiPhoneが、ピコンと間抜けな通知音を鳴らした。

どうせサークルのやつらからのしょうもないLINEだろう、と(たか)(くく)って電源ボタンを押す。

通知をタップすると、LINEのトーク画面に画面が切り替わる。

画面左上のアカウント名を見て、俺はスマホを持ったまま固まってしまった。

深見菜音(ふかみなの)

デフォルトのままの青いトーク画面には、【明日、さざ波公園に来て。渡したいものがある】という簡潔な白い吹き出しだけがあった。


深見菜音。中学時代の俺の片想い相手だ。

ヘタレな俺にも優しく話しかけてくれて、笑顔が印象的な短い髪の女の子だ。

卒業式の日、クラスの空気はどこか浮かれていて、みんな「とりあえずLINE交換しとこ」みたいなノリになっていた。

俺もそのノリにあずかり、奇跡的に深見菜音とLINEを交換することができた。

しかし俺が送った【よろしくお願いします】に、深見菜音からは敬礼する猫のスタンプが返ってきただけだった。

お互い違う高校に進学して卒業した。

大学も違うところに進学して、中学時代の片想いを忘れかけていたところに突然のLINE。

訳もなく部屋をうろちょろしながら気持ちを落ち着かせようとするが、無理だった。

当然だろう。片想い相手(元)からの5年ぶりのLINEに俺の心臓は破裂寸前だった。