ナーフフィア




ウイイイン

音がして、ミウロはつむっていた目を開けた。しかしそこは、何も変わらない森の道だった。

ウイイイン

再び音がする。

さっきから何事だと、エルに何か言おうと横を見る。

「ウイイイン」

音の正体は、エルだった。

「おい、エル!何をしてるんだ」

「ちょっと扉になりたくて!」

と、そうこうしている隣側で、ユーが二人をたしなめる。

「もう、ラウー国に行けると思ったのに!二人とも黙ってくれる?」

エメラルドの水晶を手にユーは悩ましそうだ。エルは、「そうだね、ごめん」と謝る。
ユーは、水晶の精霊に問いかけてみるからと、水晶に意識を向け直す。

「もしもし、精霊様」

『アハハンノハン!精霊様でお!』

出っ歯の男の姿をしたエメラルドの光を湛える精霊が水晶の上に現れた。

「精霊様、どうしてラウー国にうちらを飛ばしてくれないのですか?」

『それはだねぇ、過去の星になってしまってるはずの地球に住む宇宙人がだねぇ、ラウー国に行くな!そこは闇の国だ!と精霊様のわっちに言ってきてだねぇ、怖くてだねぇ、わっちはその言うことを聞こうと思ったのでお』

「ラウー国が闇の国・・・」

『本当にそうかもしれないけど、でもその人も怪しくてね?いや、そもそも地球がねぇ・・・』

「なあ、僕たちでなんとかするから、行かせてくれないか?精霊様」

ミウロが口を挟んだ。精霊は、少し唸る。

『なら、ユー様だけで。ユー様は、それはそれはお強い王女なのでお』





「あー、やっぱうちだけじゃダメよ」

ユーはボヤく。少々落ち込んだ様子だ。辺りは吹雪で、近未来都市としての賑わいも本来ならあるはずなのに、人気がなく、せっかくのビル群も商店街のような店の並びもがらんとしていた。


〈信じる心を、どうか〉

アル神の声だ。ミウロは、その言葉を聞いて、驚いた。見守ってくれているんだ、とも思う。
しかし、それよりどうして今信じる心なのか。

(アル神!信じる心をどうか、ってどういうことだ!?)

心の中で話しかける。すると、ユーにこの言葉を届けてほしいと言われる。ミウロは、「わかった」と返す。



ただ、わかったのはいいがその方法だ、どんな方法で届けることができるのだろうか。悩ましくなる。

「エル、さっき神様からユーへの伝言を預かったんだけど、どうすれば届けられると思うか?」

「そうだね・・・、飛び乗り!ただの馬の玩具!なんていうのがいればいいけど」

「それ、何なんだ?」


「貴様ら、覚悟しやがれ!」

突如、百合の花を手にした少年が、いい匂いを漂わせながら走ってきた。赤と白の髪色をしたザンという少年である。少年は、「あいつらこそ、封印してやるんだ!」と、叫ぶ。雄叫びを上げる。

「ほああああ!」

百合の花を飛ばしてきた。百合の花は、いい匂いでミウロとエルの鼻をくすぐった。

「「ほっほっ、ほああああ!」」なぜか二人は同時に真似た。

「うわああ!」そしてエルは、逃げ出す。

ミウロは、その辺の木の棒を手に取る。くるくると扇風機が回るかのように、棒を回す。

いい匂いは、瞬く間にザンに返っていく。

「い、いい匂い・・・!」

「おし、いまだ!!」

ミウロは油断した隙に、素早く棒を投げる。棒は、くるくると回転しながら、ザンに飛んでいく。

ザンは、「いい匂いを返すんじゃねえええ!!」と、百合の花を投げ飛ばす。百合の花から今度は、さっきよりきつい匂いが出た。

「う、きぶんが・・・」

 ミウロは途端、きつい匂いで気分が悪くなる。ひざと手を地面についてしまった。エルはどこかへ行ってしまって、気配が感じられない。こういう時、神様は僕に向かってなんていうんだろう。ミウロは考える。

そうだ、アル神ならきっとーー。

「ブルブル、ブオオオン!!」

 匂わない、匂わない!心の中で叫びながら、活気を入れるため、気合いが入る言葉を声に出す。

その時、「ブルオンオン♩」という歌声がしたかと思うと、炎で燃え上がった剣がスッと目の前に現れた。

『ブルオン、ブルオン♩宇宙を是非ともブルオンに!』

それから、剣はミウロの前を素通りして、消えた。

「なんだったんだ!!!」

ミウロが、今度こそ心が折れると感じた時、ザンが「ぎゃー」と叫んだ。どうやら今頃ミウロのなげた木の棒が当たったらしい。しかも、棒は頭のてっぺんにバランスよく立っていた。