ナーフフィア

ミウロは、どこまでも広がる草原を一人歩いていた。しばらく歩いていると、丘にでる。
その丘の向こうは海が広がっていた。立ち止まってぼんやりとしていると、「ミウロ」と肩を何者かから叩かれた。

「!」

気配もなく、肩を叩かれたものだからミウロは飛び上がった。ミウロの肩をたたいた張本人は、金色の髪と目をし、シルクでできたゆったりとした布を着ていた。しかも、体全体からは、黄金色のうっすらとしたオーラが出ていて、妙に神々しかった。年齢は、三十代から四十代だろうか。その者はミウロの反応を見て、笑っていた。

「そんなに驚くことか?」

「あ、あんた誰?!」

少しパニックになったミウロは、その者に向けて指をさす。

「我か?我は、アル。この星の神だ」

アルは、そう言ってほほ笑む。

「か、神?その神が僕に何か用なのか?」

指を下し、冷静さを取り戻したミウロは、背の高いアルの方を見上げる。アルは、眉をよせて深刻そうな顔になった。

「実はだな、ここ数年勢いを増しているレンア国の悪王を何とかしてほしいと思い、君とその仲間たちに頼みに来たのだ」

レンア国、その言葉を聞いてミウロはどこかで聞いた覚えがした。

「そうか、でも神様なら神の力で何とかできたりしないのか?」

「それはダメなのだよ。基本はな。我は、見守るだけしかできないのだ。だから、こうしてお主にたのんでいる」

「それは分かった。けど、仲間って誰の事?」

「雷使いの友達がいるだろう?その子と――あとは」
と、アルは空を見上げ、「しまった」とつぶやく。

「そろそろ、時間だ。後の仲間はそのうちわかるだろう」
早口に一歩二歩さがりながらそう言った後、アルはまばゆい光の塊に一瞬にして変化すると、空へ高く舞い上がっていく。

「待てよ!まだ聞きたいことが!!」
ミウロは高く天へ舞い上がる光に手を伸ばして叫ぶ。

「まずは護り鳥の住まう国、ラウー国へ行くとよい。健闘を祈っているぞ」

もう姿の見えないアルの声がしたかと思うと、空から赤色に光る羽が落ちてくる。ミウロはその羽を落とさないように手のひらに乗せた。




「ミウローー!起きてーー!」
自室に入り込んだエルが、大声で叫んでミウロはうっすら目を開ける。さっきのは、夢だったのだ。しかし、視線の先の手に赤色の羽が握られていたのを見て、はっとした。夢だったけど、ただの夢ではないのだ。

「そうだ、エル!ラウー国に行くぞ!」

慌てたように布団をはがし、ベットから出る。エルは、「ラウー国?なんで?」と首をかしげた。

「レンア国って知ってるか?今、神様がその国のことで僕たちに頼みがあるって言ってて」

「レンア国…。確か、なんでも開けることに何が何でもって全パワーを注ぎ込んでいるアク王が今その国のトップだってね?」

「なんだ、変な王だな。でも、神様によると、そんな国が問題らしいけど」
「それでラウー国に行くってどうして?」

「ううん。詳しくはわからないんだ。そのラウー国に行くよう言われただけだ」

「ただの夢ってことにしておかない?ちょっとラウー国のことで嫌な噂思い出しちゃった」

「え!しょせん噂だろ!?そんなもん気にするもんじゃないだろ」

「オイラ、行かないから!だって旅だよね?そもそもさ、怖いモンスターが出てきたらどうするの」

「僕らで戦うしかないだろ」

「オイラは無理だよ!今まで一度も戦ったことないのに!行くならミウロ一人だ!」

 エルは、部屋から出ていく。後にはミウロだけが残された。仕方ない、とミウロはため息。神様はエルを仲間に行くよう言っていたが、怖がるなら無理強いはできない。

ゴゴゴゴゴ

地響きがする。パリン。窓が割れてしまう。

「なんだ!?」
外を見ると、なんだか暗い。雲の色がおかしかった。いつもの白ではなく、赤黒い。

『ミウロよ、ラウー国には行くな!』

「なんでだ!神様が困ってるのに!?」

空に向かって叫ぶ。雲からグルグルと渦が出てきて、黄緑色の龍が姿を現した。



『とにかく、決して行ってはならん。そこは、禁じられた国なのだ!』