おはよう


「なのに時々こうして裏と表が混ざるときがあります。誰かが不用意に趣味の悪い儀式を通して裏の世界に干渉したりしたときです。今まさにこれがそう。貴方は巻き添え」
「えっ」
「あちらの方は表から熱烈にアピールを受けて、召喚されるかされないかの瀬戸際に居る邪悪なる神(笑)です」
「どこのオカルト宗教組織よ!」

 この科学が発達した社会で邪悪なる神を召喚しようと目論むとか意味が分からない。しかも巻き添えで私がここに居るってどういうこと。彼の証言を信じてはいけないと思いつつ、理不尽な状況に怒鳴り散らしたくて仕方がない。

「オカルト宗教組織もオカルト宗教組織。一代二代三代と、親から子供に役目を繋げる小さいながらに根深い粘着質な信仰を持った選民意識の強いオカルト宗教組織です」
「親から子供に…」
「ええ、彼らは家族ではなく組織! 親が上司で子供が部下! 社員は会社を運営するための歯車であり駒。上に立つものはときに非情な判断をするものです。そう、人件費削減の口減らし。効率化を図って風習を抹消。準備は整わずとも結果を出したいからこそ無理矢理進める突貫工事…勿論結果は伴わず、中途半端で不格好なそれっぽいものだけが出来上がる」

 何の話をしている。

「そう、できるはずがなかった。できるはずがなかったんですよ境界線の向こう側を越えた召喚なんて。彼らはただ信仰を深めていればそれで満足だったはずなのに。だというのに使えない上司が結果を残そうと大奮闘! 結果部下が馬車馬の如く使われて、とうとう手段を選ばなくなり…人身御供、生贄を差し出したわけです」
「まさかそれが私とか言わないわよね?」
「いいえ貴方ではございません!」

 断言されて安堵すればいいのに、いやな予感で手が震える。
 だって、関係のない話をしているようで彼は、今の話をしているはずで。

「生贄は神のもの。存在全てが神のもの。捧げられたら世界から生贄の存在は消失します。貴方はここに存在していますので、生贄ではありません」
「今なんて言った?」
「貴方は生贄ではありません!」
「そこじゃない! ――存在が」
「消失します! 神のモノになりましたので!」

 あの子。
 あの子はどこ。

 ゲラゲラと、それが笑った。