ナナイサツキコは、五月、山に霧がかかる田舎のはるかぜ村で生まれた。
村には信号機が一つしかなく、夜になると虫の声のほうが人の声よりも大きかった。
祖母は言った。
「五月に生まれたから、サツキコ。風がいちばんやさしい季節だよ」
サツキコはその言葉が好きだった。
自分の名前に、季節が流れている気がしたからだ。
サツキコが初めて「物語」に出会ったのは、村の小さな公民館だった。
月に一度、移動図書がやってきて、色あせた絵本が並ぶ。
彼女は文字より先に、絵を読んだ。
赤い靴の少女、しゃべる猫、夜の森を歩く小さな光。
ページをめくるたびに、世界が広がるのがわかった。
ここではないどこかへ、でも確かに“自分の中”へ続く道。
家に帰ると、サツキコは広告の裏に鉛筆で絵を描いた。
うまく描けなくても、物語は止まらなかった。
村には信号機が一つしかなく、夜になると虫の声のほうが人の声よりも大きかった。
祖母は言った。
「五月に生まれたから、サツキコ。風がいちばんやさしい季節だよ」
サツキコはその言葉が好きだった。
自分の名前に、季節が流れている気がしたからだ。
サツキコが初めて「物語」に出会ったのは、村の小さな公民館だった。
月に一度、移動図書がやってきて、色あせた絵本が並ぶ。
彼女は文字より先に、絵を読んだ。
赤い靴の少女、しゃべる猫、夜の森を歩く小さな光。
ページをめくるたびに、世界が広がるのがわかった。
ここではないどこかへ、でも確かに“自分の中”へ続く道。
家に帰ると、サツキコは広告の裏に鉛筆で絵を描いた。
うまく描けなくても、物語は止まらなかった。

