昔は……やりたいことやなりたいものはあったかな。
思い出そうとしても、頭の中に霧がかかったようになってよく思い出せない。
なんだっけか。
うん……まぁいっか。
「柴田さんは大丈夫だろ」
「え、どうして」
「民宿のお手伝いしてるなら、自己管理もできる」
確かにお手伝いはしてるけど、簡単なことしかしてない。買い物とかお掃除とか。
それもお祖父ちゃんやお祖母ちゃんのためであって、自分のことだけになると……秒で汚部屋になりそうな予感しかない。
「どうだろう、そうなってみないとわかんないよ」
私は結局、曖昧な答えしか返せなかった。
だけどそれでいいと思う。
「焦ることもないしね」
矢島くんがあっさりと肯定した。
そうだ。こういうのを確か。
「モラトリアムってやつ?」
「そうだね、モラトリアム」
私は寄ってきた蚊を手で追い払う。
「だけど宿題は待ってくれない」
「……そーだね」



