「矢島くん!」
私の呼びかけに幼なじみの矢島くんは額の汗をぬぐいながら振りむいた。
「秋山さん、おはよう」
「今日も暑いねぇ」
「夏休みだからね」
私は親の都合で、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが経営する民宿に小さい頃からお世話になっている。そのお隣りで暮らしていたのが矢島くんだ。
田舎では子どもが少ないから、お互いに興味津々で遊ぶようになった。
廃墟に秘密基地を作ったり、海辺で貝がらや廃材を集めてみたり、神社で虫とりをしたりして遊びまわっていた。
「宿題どう? 進んでる?」
「……まぁ普通」
間が気になるけど気にしないでおこう。私だって人のこと言えないし。
「お父さんとお母さんがね、来年から沖白の塾に通いなさいって」
「受験か」
「受験だ」
その単語を聞いただけで心が重くなる。いつかは直面しないといけない問題なんだけど、今だけは忘れておきたかった。
「矢島くんは進路、どうするの?」



