その声に下を見ると、矢島くんが小さな脚立を持ってくるところだった。
「ありがとう」
さて、もうひと息。
私は足の先を金網に引っかけると、体重をかけてもう片方の足を上げた。
「気をつけて」
脚立を押さえてくれている矢島くんの声かけにうなずき、ゆっくりと足を乗せる。ギッと音が鳴ったのは古いからだと思いたい。
もう片方の足も脚立に乗せる。バキッと嫌な音がしないよう祈った。
「ふぅ……」
祈りは通じて、金網を握る手をゆるめて一気に飛びおりた。
手もサンダルも汚れてしまったけど、あまり気にならなかった。気になるのはこの先の秘密基地だけだ。
「サンダルのこと考えとけばよかったね」
矢島くんが眉を八の字にして頬をかいた。
「大丈夫。壊れたわけじゃないし、古いやつだから」
お祖母ちゃんに「古くて壊れてもいいやつがあったらちょうだい」とお願いして見ると、下駄箱の奥から〝つっかけ〟と読んでいるサンダルを持ちだしてくれた。



