「なにがあるの?」
「行ってから見せるよ」
私は「ずるいな」と少し笑った。そんなことを言われたら気になってしまう。
「行く?」
「行く」
そこなら海で起きたようなことは起こらないだろう。そもそもあんなことがどうして起きたのかはわからないけど、矢島くんがいるなら大丈夫。きっと。
「そこってなんていう工場?」
「久利浜工機」
「そこのどこら辺?」
矢島くんの隣りを歩きながら質問を続ける。とにかくなにか話していないと不安だった。
彼は知ってか知らずかうっとうしがることなく答えてくれる。
「そこの寮なんだ」
「寮?」
「そう、単身用の部屋とか家族用の部屋とか……色々あるんだけど、俺が秘密基地にしたのは五号室」
「単身用? 家族用?」
「単身用」
工場の寮なんて想像もできないけど、ちょっぴりドキドキする。どんなところだろう。暑くないといいな。
相変わらず矢島くんは汗一つかいてない。



