かすかに震える指でページをめくる。
「おくりな……?」
諡──亡くなった人につける、あの世での名前。〝贈り名〟とも呼ばれることもある。
元々は高貴な身分の人が、生きているときにしてきたことを評価してつけたものだというけれど、この昔話にそこまで偉い人は出てこない。
出てくるのは女の子と村人たちと海神で、魚がちっとも獲れなくなってしまったところから物語は始まる。
このままではみんな飢え死にだ。海神に嫁を差しだすしかない、と誰もが考えはじめたとき。
「私が海神の嫁に参ります」
そう言い残して、女の子は小舟に乗って海へとこぎ出した。
沖に出てからしばらくして、高波におそわれた女の子は気を失ってしまう。
だけど気づいたときには、目の覚めるような美しいお城が目の前にあった。
乳白色に輝くその城を見た女の子は、ひと目で海神の城だとわかった。
「村の娘でございます、海神様のお嫁に参りました」



