ため息をつきたくなるのを腕をつねって抑える。何でもない顔をして助手席から降りると、玄関の引き戸がガラガラと開いた。
「亜衣ちゃん、いらっしゃい!」
「……お祖母ちゃん」
小花を散らした割烹着姿のお祖母ちゃんは、ふくふくした手で私を抱きしめた。
「よく来たねぇ! お腹空いてるでしょ? パスタできたとこだから一緒に食べようね」
「うん」
お祖母ちゃんに手を引かれていく私の後ろから、お祖父ちゃんの「荷物は上に持っていくからなぁ」と間延びした声が届いた。
お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが経営する民宿は──二階建てのひなびた木造建築は、〈秋風屋〉と看板が出ていなければ宿とは誰も思わないだろう。私だって小さい頃は民家だと勘違いしていたくらいだ。
『おじいちゃんとおばあちゃんはおとうさんやおかあさんとおなじあきやまじゃないの?』
そう聞いたのは保育園くらいのときだったと思う。こんな質問をしたのは確か。



