……全部吸いとってくれればいいのに。
ぼんやりそんなことを考える。
波のさざめきが雑踏の記憶と混ざって、水色の空が星の見えない夜空に塗りつぶされていく。きらめく海がビルの群れに重なって、どぎついネオンの看板が浮きでてきた。
誰も私を気にしない。
私も誰も気にしない。
皆が皆、自分のことで精一杯。
それが本当に楽だった。
風景の中に溶けてしまいたくて、足をただ動かした。
もっと。
もっと。
荒んだ空気が肺を傷つけようとかまわない。
もっと。
もっと。もっと。
ほら、あの子が手を振ってる。
うん。前みたいに遊ぼう。鬼ごっこもかくれんぼも、秘密基地を作って宝物を埋めよう。二人でいよう、二人で行こう。
ああでも気をつけないと。
おっかない警察や慈善団体に捕まってしまうから。



