「わかった、じゃあね」
電源ごと切ってしまう。汗はもう引っこんでいた。
ホームに電車が滑りこんだ。ベージュとあずき色の電車に乗り、近くのシートに座る。スプリングがギィと鳴った気がした。
十数秒メロディが流れたあと、プシューと息を吐きだしてゆっくりと動き出す。
──私に戻ってほしくないの?
飲みこむことも吐きだすこともできない言葉。
口に含んだまま、真っ白な吊り革をにらむ。
「矢島くん、待たせないようにしないと」
ほぼ吐息に近いつぶやきで、自分の意識を切りかえる。
こんな気持ちのまま彼に会えない。
お祖父ちゃんやお祖母ちゃんにも。
ふっと車内が暗くなる。トンネルの中に入ったからだと一瞬遅れてわかった。
目の前のガラス窓には疲れきった女の子がいる。シンプルなTシャツとジーンズだけが鮮やかだ。
大丈夫、今はトンネルの中にいるだけだ。焦っちゃダメ。



