駅のホームでベンチに座ってひと息ついた。人はまばらで、向かいのホームにも一人か二人しかいない。
ホームは少しマシだけど、今度は蒸し焼きにされてる気分になる。
「?」
またスマホが震えた。
今度は電話だった。
「……もしもし」
『もしもし、亜衣?』
お母さんの声は固い。取引先の人からの電話のときよりも緊張してる声だった。
「お母さん、どうしたの?」
『うん、その……夏休み終わってからのことだけど』
「うん」
『お祖父ちゃんちからそっちの学校行く?』
目の前を特急がものすごい勢いで通りすぎた。ぶわりと風が頬を打つ。
「……そっちの学校に通ってほしいの?」
『え?』
「そのほうがお母さんもお父さんも楽?」
『あ、え、違う違う。そのほうが亜衣の気が楽かなって』
アナウンスが聞こえてきた。これに乗れば時間通り帰れる。
「そろそろ電車くるから……切るね」
『そう……その、どっちでもお母さんたちかまわないから』



