また一瞬、強い潮風が吹いた。 反射的に目をつむる。 目を開ける。 ──誰も、いなかった。 いってしまった。 誰に言われたわけでもないのに、どうしてかそれがわかってしまった。 「矢島くん!」 「矢島くん、家族と元気で!」 海に向かって叫んでも、返事はない。 だとしても、これでよかった。 よかったんだ、きっと。 自分に言い聞かせて、何度も目をこすりながら民宿へと戻った。