矢島さんの、『世界中の紛争地帯や被災地で、実際にはなにが起きているのかを伝えたいって言っていたよ』という言葉が耳の奥で響いた。
「……やっぱり矢島くんはすごいよ」
「え?」
「亡くなっても人助けして、自分の行動を客観的に見ようとして」
私なんて、神社に行かなくなったから神様が怒ってループさせてるんだと思っていたから。
「それも、もう終わりにしようと思って」
「そうなの?」
「いい加減、家族を待たせてるからね」
矢島くんは海へと顔を向けた。私もつられるように同じほうを向く。
波は穏やかで、黒々とした姿は気を抜くと飲みこまれそうだ。
「私もだいぶ待たせちゃった」
「大丈夫、明日にはちゃんと会えるよ」
優しく言い切る矢島くんに、私はなんてことない感じで手を差し出した。
「握手して別れよう」
きっとこれきりだから、と言おうとする前に手をつかまれ、抱きすくめられた。
「元気で」



