一ミリずつ玄関の引き戸を開けて、すき間からするりと外に出た。
暑さはやわらいだけど、まだむし暑い。
それに虫の声もすごくて、そういや夜はこんな感じだったなと思い出した。
夜空がびっくりするほど綺麗なことも。
空なんて見上げたの、いつぶりだろう。
こっちに来てから……一度も見てない。それどころじゃなかったから。
そろそろ首が痛くなってきた……。
行かないと。
「大丈夫、怖くない」
強がりでもなんでもなくて、恐怖よりも辛さのほうがどちらかといえば大きかった。
海まで歩くうちに、辛さはどんどん大きくふくらんで。
海岸に着いたときに、とうとう破裂してしまった。
ぐっと目をこする。
最後なんだし、笑って別れたい。
そう思っていたけど、現実はボロボロだ。
こうして矢島くんと顔を合わせるだけで、しゃがみ込んで泣きわめきたくなる。



