「どうしてかわかってるくせに」
私も微笑んだ。
あれから矢島さんと一緒に民宿に帰って、二人には心配されたけど……質問ぜめにされるようなことはなかった。
お母さんから茉耶のこととか聞いていたんだと思う。
それでも雰囲気はぎこちなくて、色々と聞きたそうな顔をしていたから。
「矢島さんにちょっとお話しを聞いてもらってたの。知らない人のほうが話しやすいときもあるし」
「そう……そうね、そんなときもあるわね」
「矢島さん、ありがとうございました」
お祖父ちゃんたちが深々と頭を下げるものだから、矢島さんが焦って顔を上げさせようとした。
その様子がなんだかおかしくて、ひさしぶりに笑った。
覚悟はもう、決まっていた。
矢島さんが出版社との会議のため、沖白のホテルに向かった次の日の夜。
二人の居室に聞き耳を立てる。
かすかに寝息が伝わってきて、私は忍び足でその場を離れた。



