相手はね、「娘さんの人生のためにも示談にしましょう、裁判になったら色々とあることないこと言われますよ」って。
まぁ、あれだよね。
キズモノだって後ろ指さされたくないなら、金は払ってやるから黙ってろってこと。
それで……茉耶のお父さんとお母さんはそれを受け入れたの。
戦うべきだった、とは言わないし、言えない。
娘の人生を守るためだった。
傷ついた娘がこれ以上傷つかないように。
あいつがどうなったかはわからない。
塾は辞めたっぽいけど、ほとぼりを冷ますために海外に行ったとか、婚約破棄になって引きこもったとか。
噂は色々あったけど、正直どうでもよかった。
茉耶から離れたならそれで十分だった。
時間はかかるかもしれないけど、あいつを忘れて立ち直ってくれる。
茉耶ならそうする。きっとそうしてくれる。
私には、まだ希望があった。



