「そこに真行が通りかかって……オーナーと一緒に女将さんを連れていくと言ってね」
「え……」
「二人で抱えて神社まで逃げられたんだけど、まだ逃げ遅れた人がいるからと戻ってしまった」
「……待ってください、それじゃ、矢島くんは」
矢島くんは。
矢島さんは目にうっすらと涙をたたえ、首をゆっくりと横に振った。
「……三十年経っても、まだ見つかってない」
「……」
「残ったのはこれだけだ」
矢島さんはカバンからカメラを取りだして見せてくれた。
あの日見たカメラと全く同じものだった。
「これは真行が戻るときにオーナーに預けていったやつでね、中学生になったときにお祝いで贈ったカメラなんだ」
「カメラマンになりたいって、言ってたんですか?」
「そうだね……今の言葉ならジャーナリストかな」
「ジャーナリスト……」
「世界中の紛争地帯や被災地で、実際にはなにが起きているのかを伝えたいって言っていたよ」



