シェヘラザードに捧げる物語




 大賀くんにメールを送り、サンダルウッドの香りに包まれて眠りについた次の日──。



 スマホの着信音で目を覚ました。



 跳ね起きて画面を確認する。


「原嶋さん……?」


 どうしたんだろう。

 意味もなくベッドの上で正座をしてから電話に出た。


「もしもし、柴田です」

『どうも、美咲の母です』


 無意識に生つばを飲み込んだ。


「はい。その……先日は、大変申し訳ありませんでした」

『謝罪は結構です。それよりお願いがあるのですが?』

「お願いですか?」


 彼女の声からは怒りを感じない……と思う。

 自分の願望フィルターで聞いてると言われれば否定はできない。

 だけどそれよりも彼女の“お願い”が気になって、一旦その不安は頭の隅に追いやる。


『美咲と大賀さんが付き合えるよう、協力してほしいんです』

「協力、ですか」


 案外、するりと口から言葉が出てきた。

 ドラマとかでは固まって返事ができなくなってしまったりするのにな。