シェヘラザードに捧げる物語




『ところで、美咲との夕飯はいつにいたしますか?』


 ほうら、来た。


「少々立て込んでいましてね、数ヶ月は先になりそうです」

『仕事のついででかまいませんのよ』

「ついでというわけにも行かないでしょう」


 照屋に呼ばれて原嶋さんに交渉を任されたのはいい。いいが、事あるごとにこうして見合いのような状況をセッティングされそうになっている。

 昨日は父親のほうに、「美咲は君のような男だったら幸せになれる」だの「自分の娘ながら良妻賢母の素質があると思わないか?」だのアプローチをされて、慰謝料や接近禁止について話し合いたかったのに散々だった。

 唯一の救いは、彼女が俺に興味を示していないことだ。


「原嶋さんのご様子はいかがです? 裁判か示談かについて方向性をしっかり決めておきたいのですが」

『それに関しましては私どものほうからお伝えします』

「そうですか……ではどうでしょう? 示談を望まれますか?」