シェヘラザードに捧げる物語




 私は床に放ったままのスマホを拾うと、メール作成画面の本文に指を滑らせた。

 さて、どんな文面にしようか。

 少し悩んで、思うままに打ってみることにした。


『原嶋さんからの伝言で伝え忘れたことがある。あなたと結婚する気はないと伝えてほしいって』


 ……素っ気ないな。素っ気なさすぎる。


『原嶋さんからの伝言についてですが、伝え損ねた事項がありますので連絡いたしました』

『大賀さんと結婚はしないとのことでした』

『連絡が遅れ大変申し訳ありません』


 ……いや、固い。他人行儀すぎる。


 もういっそ簡潔にして……。


『原嶋さん、大賀くんと結婚する気ないって』


 そうだ。原嶋さんは大賀くんと結婚したくないんだよね。

 それならそこまで落ち込むことはないのでは?


 文面を考えるうちに冷静になった思考は、原嶋さんの意思についてに関心を向けた。

 原嶋さんは結婚があんな形で破談になって、誰かと恋愛するのはもういいやとなっているかもしれない。