シェヘラザードに捧げる物語




 ──あなたと結婚するつもりはないと伝えてください。


 原嶋さんの、あの言葉はどんな調子で言っていただろう。

 まさか、あの事件みたいに大賀くんが一方的にプロポーズを……?


 私は首をブンブン振って妙な考えを追い払った。

 あの新郎と大賀くんは同じじゃない。


「そうだ、大賀くんに連絡しないと」


 私はスマホから大賀くんの番号をタップして、ふと思い至る。


 本当に結婚を申し込んでいたらどうしよう。


 原嶋さんと大賀くんが並んだ図が脳裏に浮かぶ。



 淑やかで美しい原嶋さんと、鋭く男前の大賀くん。



 ……すごく絵になるな。


『もしもし、柴田?』


 あ、大賀くん、今電話して平気? 柴田さんから連絡があって、仕事を辞める気はなくて、あなたとも結婚をするつもりは──


『柴田?』

「……大賀くん、原嶋さんから連絡があったから伝えとく」

『原嶋さんから!? 何て言ってた?』

「……」


 スマホを持つ手が小刻みに震える。