シェヘラザードに捧げる物語




 私はホテルの一室で、十年前のほろ苦い記憶を思い出していた。

 別にロマンチックな状況ってわけでもない。むしろ逆だ。

 せっかく整えてきた髪はボッサボサだし、血の匂いは消えないし。でも出血は止まった気がするから状況は改善されている。うん、そう思おう。

 ……ウエディングプランナーとして、後処理に関われないのは辛いけど。

 同僚たちが「今日はもう休んでください」と一致団結してしまえば、もう私にできることはない。「ああすれば」「こうしておけば」と一人で反省会をするくらいだ。

 あの日の、私のように。


(……懐かしいな、最近はもう思い出すこともなくなったのに)


 高校のときの、幼い初恋。

 彼と誠実に向き合おうとせずに、自分の想いばかり考えた、その代償。

 拙くて、身勝手な在り方。


(それでも、確かに恋だった)


 きっとあの女性もそうだ。

 披露宴の最中に、突然現れた彼女。