シェヘラザードに捧げる物語




「……そうですか」

『弁護士さんとも明日話すんだけど、訴えを取り下げてもらえるよう頼んでみるよ』

「本人が責任を問わないとおっしゃってるなら大丈夫ですよ、絶対」


 私は応援するように声に力を込める。

 主任は『ありがとうね』と穏やかに笑い、伝えるべきことを伝え終わった私は通話を終わらせた。

 そのまま真っ暗な画面をぼんやりと見つめる。


 思ったよりもやばい事態になってるな……。


 ここまでの状況は久しぶりだ。

 セクハラ親父がスピーチでやらかしたり、新婦の元彼が掠奪しにきたり。

 事件を挙げればきりがないけれど、ここまで拗れたのは半年前のあれだ。

 新郎が新婦友人に一目惚れしてしまい、スピーチのときにプロポーズした事件。

 ホテルが訴えられることはなかったが、新郎と新婦友人は浮気をしていたと勘違いされて、無実の彼女を責め立てようとする招待客をスタッフの皆で押さえたのは記憶に残ってる。