シェヘラザードに捧げる物語




 ……ここであれこれ考えても仕方ないのはわかってる。

 でも大変そうだな……。


 ちょっと覗いてこようかな。


 いけない考えが浮かんで、とっさにアイスティーを飲み干した。

 仕事に関する話だったらまずいだろう。いや、プライベートでも駄目だけど。

 どっちにしろ盗み聞きはよくない。

 それよりも食事に集中しよう。


 フォークを握り直した、その矢先。



「お母さん……?」



 バッグが震えた感じがして、手を突っ込んでスマホを取り出すとお母さんからのメッセージが届いていた。


『律、また怪我したって聞いたけど本当?』


 ……耳が早い。主任からだな。


「大したことないよ」

『大したことあるでしょう? 病院行ったの?』

「検査受けてきた。結果は来週」

『わかったらすぐ教えてね』

「わかった」


 これで終わらせようと思ったら、またメッセージを受信した。


『転職する気はないの?』


 ため息をつきたくなるのを抑えて、短く返事を打ち込む。